料理研究家・ヤミーさんに聞く:食のプロが実践している「うつわ」の楽しみ方
- 粟村千晶

- 5月11日
- 読了時間: 5分
こんにちは。POTTERY × POTTERY 編集部スタッフです。
今回は、料理研究家のヤミーさんの「うつわ」にまつわるこだわりをお届けします。
世界の家庭料理を「3ステップ」で手軽に紹介しているヤミーさん。
レシピ本をめくるだけで、何カ国も旅したような気分になれるのは、うつわの力もあるのでは。
そんな思いから、日々のスタイリング術やうつわ選びについてたっぷりとお話を伺いました。

1. 料理とうつわに関する考え:白をベースに小物使いで変化をつける
- ヤミーさんはさまざまな国の料理を作られていますが、料理とうつわの関係性をどのように考えていますか?
うつわは、料理の邪魔をしない、白い無地のものが多いです。
主宰している料理教室でも、使うのは白いうつわのみ。
白はどんな料理も受け止めてくれますし、布やペーパーなどの小物使いや小皿の配置を少し工夫するだけで、アジアらしさや洋風の雰囲気が出るんですよ。
-世界各地を訪ねた中で、日本とのうつわ使いの違いなどを感じましたか?
海外は、日本よりもうつわ使いがラフだと思います。
また、旅先で出会う海外のうつわは、現地では日本のお茶碗のような「日常の道具」です
そのため帰国してからも、しまい込むのではなく、どんどん使うようにしています。
うつわはその国の文化や雰囲気が詰まっており、海外のうつわを日本で使うことで特別感があります。
例えば、韓国ではお茶碗が日本より平たく、持ち手の長いカトラリーを使用。
同じ「お箸を使う国」にもかかわらず、うつわが違うのは面白いですよね。

2. 日々の食卓やスタイリングのポイント:基本は料理が「主役」
-日常の食卓と撮影のスタイリングで、特に意識されているポイントはありますか?

「日常の食卓」と「撮影」で、選ぶうつわに大きな違いはありません。
ただ、撮影のときは、広い「リム(縁)」があるものは避けることがあります。写真に撮ると、料理がこじんまりと見えてしまうことがあるからです。
あとは「色合わせ」ですね。
・食材の色に合ったうつわを選ぶ
・メインのうつわに合わせてサブで使ううつわを決める
などを意識しています。
また、シンプルな見た目のお料理なら、テーブルクロスを柄物にして華やかさを足す、
色鮮やかな料理なら、ランチョンマットやお皿は無地にするなど、料理に合わせてスタイリングしています。
3. 愛用のうつわについて:自分の好きに正直に選ぶ
- 普段よく使っている、お気に入りのうつわを教えてください。
まずは、イタリアで活動されていた作家さんの土鍋です。
煙突のようなつまみが特徴で、沸騰するとそこから湯気が立ちのぼります。
その様子を見るのも、料理時間の楽しみのひとつ。
1人分のご飯やうどん、スンドゥブなどマルチに活躍してくれて、炒め物までできる。
この土鍋があるだけで、食事の時間が待ち遠しくなります。

それから、スペインの「ムルシア」という街で見つけた絵皿です。
お店の階段の壁に飾ってあった一枚に一目惚れ、本来は飾って楽しむようですが、日常的に使っています。
少し深さがあって、カレーやアジア、メキシコの料理にも合うんですよ。

次に紹介するのは、沖縄で手に入れた「やちむん」。
驚いたのは、バラバラに買ったお気に入りの相性が良かったこと。
そのおかげで、柄同士を自由に組み合わせても違和感なく楽しめています。
一番上のうつわは深さがあるので、どんぶりのように使いますが、何でも合います。

最後に紹介するのが、日本製の手描きの深皿。
後から気づいたのですが、NHKの「あさイチ」に必ず持参していたのがこのうつわ。
盛り付けやすいので、無意識のうちに手に取っていたのでしょう。

4.うつわは「思い出」:だからこそ大切に使っています

-うつわを選ぶときのこだわりは何ですか?
私にとって、うつわは「思い出」です。友人からの贈り物だったり、旅先での出会いだったり、使うたびに手に入れたときのエピソードが蘇ります。
だから、私の家にあるうつわは、すべてがフル稼働しています。
うつわ選びの基本は、「使いやすさ」が優先。洗いにくいものは選びません。
さまざまな国の料理を作るので、「何にでも合うか」「盛り付けやすいサイズや深さか」という実用性は気にしますね。
そのうえで、大切にしているのが「暮らしの中で使うイメージが浮かぶかどうか」です。
また、基本は「1枚ずつ」購入します。
ただ、取り皿のように複数人で使うものは、シンプルなデザインを2枚や4枚といった単位でそろえるようにしています。
さらに、色は明るい色よりもグレイッシュなものを選びます。そのほうが料理を盛り付けたときになじみやすいからです。

- 海外でうつわを買う際に気をつけていることはありますか?
気を遣うのが持ち帰りの方法です。
上下からの圧力がかかると割れてしまうので、スーツケースに詰める際は洋服のすき間に入れてパッキングしています。
それでも心配な場合は、手荷物で持ち帰ります。
また、海外で購入したうつわは、電子レンジで使えないことが多いです。
ただ、その不便さを越える思い入れがあるので、日々使っています。
【インタビューを終えて】

私が心に残ったのは、「うつわは“思い出”」という言葉。
うつわ好きの私たちは、つい「人気の作家さんのものだから」「セットでそろえなきゃ」と、頭で考えてしまいがちです。
けれどヤミーさんは、手に入れたときの記憶や、その背景にある物語を大切にしていました。
しかも、割れたうつわは金継ぎをするために、ストックしているとのこと。
毎日使うものだからこそ、洗いやすさや実用性はきちんと見極める。
けれど同時に、手に入れたときの記憶や、旅先の空気感も大切にする。
その絶妙なバランスが、さまざまな国の料理を手がけるヤミーさんの食卓を支えているのかもしれません。
うつわは、ただの道具ではない。
思い出を重ね、時間とともに育っていく存在なのだと、あらためて気づかされるインタビューでした。




コメント