酒器に惹かれて「唐津旅」
- 塚越 真澄
- 24 分前
- 読了時間: 4分
行きつけの店で出会ったひとつの徳利をきっかけに、作家さんの個展、工房、そして唐津の城下町へと旅をすることになりました。
この記事では、実際に唐津を訪れて味わった体験を通して、唐津焼の魅力と、うつわをめぐる旅の楽しみ方をご紹介します。
いつもの店で、心をつかまれた徳利
毎日の締めくくりはビール派ですか?ワイン派ですか?私はこのところすっかり日本酒にはまっています。
行きつけの燗酒料理屋さんで素敵な酒器が並ぶなか、中でも特に心をつかまれたのが、ある作家さんの徳利でした。ざっくりとした土肌に、とろりと溶けた釉薬の景色。その酒器でいただく熱燗の味は格別です。
作家さんのお名前を伺い、後日、横浜高島屋さんで開催されていた個展へ。それが唐津焼の内村慎太郎さんのうつわとの出会いです。
枇杷色の茶盌や端正な花器が並ぶ会場で、好みの徳利と目が合いました。
「朝鮮唐津がお好きなんですね」
そう声をかけてくださった内村さんの一言が、唐津焼への興味を大きく広げてくれました。俄然唐津焼に興味が湧き、実際に訪れてみることにしました。
唐津焼って、どんなうつわ?
朝鮮唐津は、佐賀県唐津市を中心に作られる、唐津焼のひとつです。
唐津焼は桃山時代から続く伝統工芸品で、「一楽二萩三唐津」と称され、茶の湯の世界でも親しまれてきました。
近隣の有田焼のきめ細やかな白磁とは対照的に、土の表情や釉薬の景色を楽しめるのが特徴です。
鬼板の絵付けの「絵唐津」、白濁した藁灰釉の「斑唐津」、深い黒から飴色まで変化する鉄釉の「黒唐津」などがあり、なかでも「朝鮮唐津」は、黒い鉄釉と白濁する藁灰釉を掛け分けたもので、力強さと柔らかさに魅力があります。

山の工房で生まれるうつわ
内村慎太郎さんは佐賀県唐津市に隣接する福岡県糸島市に工房を構え、古唐津の写しや、その源流となる高麗、李朝の古陶の写しを長年制作されています。
山居窯は緑深い雷山の中腹にあります。川音が心地よく、この自然の中で作品が生まれるのかと感激でした。

ギャラリーの奥にある茶室では、内村さん自らお抹茶を点ててくださいました。また、中国茶にも興味のある私に、数種類の茶葉をそれぞれに合う茶器でふるまってくださいました。茶葉と茶器の組み合わせで味わいの印象が驚くほど変わります。実際にお茶をいただき使ってみることで、うつわの楽しみの奥深さを改めて感じました。
城下町で味わう唐津焼
夜は唐津の城下町へ。
日本料理ひら田で、唐津の食材を生かした懐石料理をいただきました。
ご主人に今回の旅では内村さんの工房を訪ねたことをお伝えすると、内村さんの酒器を出してくださいました。
唐津の食材、佐賀の日本酒「七田」、そして唐津焼の酒器。土地に根ざしたものが重なり合う時間は、旅ならではの贅沢でした。

懐石の締めくくりには目の前で点ててくださったお抹茶とお茶菓子をいただき、余韻の残る夜となりました。

唐津で立ち寄りたい、うつわギャラリー
今回の旅で訪ねた場所すべてはご紹介しきれませんが、唐津駅からほど近い「ギャラリー一番館」も立ち寄りたい場所のひとつです。
14代中里太郎右衛門をはじめ、唐津焼を代表する作家の作品が展示・販売されています。
さまざまな唐津焼の中からお気に入りの一点に出会えるかもしれません
また、内村慎太郎さんの個展も2026年2月7日(土)から15日(日)まで開催されます。
さいごに〜うつわから始める旅〜
今回の唐津旅は、行きつけの店で出会った一つの徳利からスタートしました。
個展、工房、そして産地を訪ねるごとに、唐津焼の背景にある歴史や文化に触れ、さらなるワクワクが重なっていきます。唐津焼と茶道の結びつきも体感し、日常使いのうつわから一歩進んだ茶の湯の世界のうつわへと興味が広がりました。
ぜひ身近なところから、うつわの楽しみを旅のように深めてみてください。
陶芸家 内村慎太郎氏
日本料理ひら田
唐津焼と有田焼の専門店 GALLERY 一番館













コメント